第34号 2011年08月16日
メルマガ vol.34 「クレジット産業の収益認識」
今回のIFRSメルマガでは、クレジット産業に対象を絞って、IFRSの下での収益認識を説明します。
クレジット会社(カード会社・信販会社など)が信用購入をあっせんするとき、購入者(顧客)から顧客手数料を受取り、販社(加盟店)からは加盟店手数料を受取ります。IFRSの下で、これらの手数料はどのように収益認識するのでしょうか。
このメルマガでは、信用購入あっせん取引の実態と従来の日本基準における取扱いを確認してから、IFRSでの収益認識方法を見ていきます。すると、クレジット会社は、IFRS導入に当たって従来の収益認識方法を再検討する必要があることを理解できるでしょう。
信用購入あっせん取引の経済的実態
信用購入あっせん取引とは、クレジット会社が顧客に代わって代金を加盟店(販社)に一括払いし、顧客から代金を分割回収する取引です。
クレジットカード取引がその最たるものでしょう。また、オートローンなど、商品購入の都度クレジット会社が信用を供与する取引もあります。前者は「包括信用購入あっせん」、後者は「個別信用購入あっせん」と呼ばれますが、いずれの取引でも、クレジット会社は以下の手数料を収受するケースが多いようです(下図も参照下さい)。
① 顧客手数料
クレジット会社が顧客から収受する手数料をいいます。顧客からの代金回収の都度、その回収代金の一部として徴収されます。
② 加盟店手数料
加盟店(販社)に対して、商品代金を一括立替払するにあたって、その控除項目として徴収されることが一般的です。

ところで、加盟店手数料・顧客手数料はいずれも、クレジット会社が、顧客に信用を供与することによって稼得する収益と考えられます。
顧客手数料は、割賦代金に料率を乗じて計算されることから、金利的な性質を持つといえます。加盟店手数料は、クレジット会社が、顧客の信用調査を行い、割賦債権の貸倒リスクを負担するといった信用供与に関するコストを肩代わりすることへの対価である、と考えることが自然です。
したがって、経済的実態の観点からは、顧客手数料と加盟店手数料の受取りを別個の取引と捉えるのではなく、クレジット会社の顧客に対する信用供与という、単一の金融取引を構成するものと捉えることが適当でしょう。
なお、現実の包括/個別信用購入あっせん取引では、クレジット会社が販売代金を立替える際に、加盟店の顧客に対する売上債権を譲渡するという法的形態をとるケースが多いようです。この形態では、
- ・クレジット会社の立替払 → 債権譲受の対価の支払
- ・加盟店手数料 → 債権譲受の割引額
- ・顧客手数料 → 当該債権に係る利息の受取
- ・顧客の割賦代金返済 → 債権元本の回収
となり、債権譲渡に係る一連の取引とみなせます。経済的実態とも整合的といえるでしょう。
日本基準における収益認識
クレジット産業が急激に成長した1980年代、通商産業省(当時)は、信用購入あっせん取引の会計処理を検討し、1985年に「クレジット産業に係る会計基準の標準化について」(通商産業省通達)にまとめました。当該通達では、顧客手数料と加盟店手数料は、共に割賦金の回収期日の到来に合わせて収益を計上する「期日到来基準」で認識することが確認されています。
ただし、当該通達は画一的な会計処理を強制するものではなかったため、収益認識に係る会計方針について、ある程度各社の自主性に任された面もあったようです。
例えば、クレジット産業各社の有価証券報告書を見ると、顧客手数料は「期日到来基準」で収益認識する、としていますが、具体的な期間配分方法になると、「7・8分法」や「残債方式」(注)など複数見られます。加盟店手数料についても、立替払契約履行時に計上する方法・取扱高計上時に一括計上する方法・期日到来基準など、多くの会計方針が見られます。
(注)
「7・8分法」…手数料総額を分割回数の積数で按分し、各返済期日到来のつど積数按分額を収益計上する方法
「残債方式」…元本残高に対して一定率の料率で手数料を算出し、各返済期日のつど算出額を収益計上する方法
IFRSにおける収益認識
それでは、信用購入あっせん取引が債権譲渡を含む一連の金融取引であることを踏まえて、IFRSにおける加盟店手数料・顧客手数料の収益認識方法を検討しましょう。
現行IFRSで収益認識を定めたIAS18では、現金又は現金同等物あるいは債務の第三者の利用に対する対価は、「利息」として収益認識すべき(IAS18.5(a))としています。
信用購入あっせん取引を、返済期限まで顧客に商品購入代金を融通する金融取引と解釈すれば、加盟店手数料及び顧客手数料の合計は、「利息」として収益認識することになります。
また、IFRSでは、実効金利法で利息が認識されます(IAS18.30)。実効金利とは、金融商品の予想残存期間を通じた将来の現金受取額を、正味帳簿価額まで正確に割り引く利率のことです(IAS39.9)。
信用購入あっせん取引の場合、加盟店手数料と顧客手数料の合計を、立替時から返済終了時にわたって実効金利法で配分します。ここでの実効金利は、将来の割賦支払額と顧客手数料の割引現在価値が、商品代金から加盟店手数料を控除した金額(債権譲渡額)に一致する割引率です。クレジット会社は、債権残高に実効金利と期間を乗じた金額を収益として 認識することになります。
分かりにくいかもしれないので、最後に具体例を見てみましょう。
実効金利法による手数料の配分
【前提】
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(×0年3/1)顧客は、加盟店で100の商品を割賦購入した。
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(×0年4/1)クレジット会社は、加盟店手数料5を差し引いた金額95を加盟店に支払った。
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(×0 ~×4年3/31)クレジット会社は、毎年3/31に顧客から25ずつ代金を回収すると共に、顧客手数料として債権残高の5%を徴収した。
【実効金利の算出】
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クレジット会社は、×0年4/1に加盟店から、加盟店手数料(代金の5% = 5)を差し引いた95で顧客に対する売上債権を譲り受けたことになります。クレジット会社にとって、当該債権の対価(当初認識時の公正価値=帳簿価額)は95です。
・
一方、クレジット会社は、顧客から債権元本(商品代金)を回収し、利息(顧客手数料)を受け取っています。これらの割引額が、当初認識時の債権簿価である95に一致するような割引率(7.3%)が実効金利となります。その計算過程は、(表1)のとおりです。
(表1)

- キャッシュフローの割引現在価値(ΣE)は、以下のように計算しました。

【利息の認識】
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先ほど求めた実効金利(a)に、前期末の債権簿価を乗じることで、毎期の利息認識額(d)が求められます。利息は損益計算書(包括利益計算書)に計上されます。
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利息認識額(d)は、毎期顧客から入金される顧客手数料(b)と、顧客手数料を超過する金額(c)からなります。
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会計上、顧客手数料を超過する金額(c)は、返済期間にわたり債権簿価に加算されていきます。
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また、cの合計額は加盟手数料5に一致します。本問の場合、加盟手数料は、債権残高(残債)と顧客手数料に応じて、回収期間にわたって分配されると解釈することもできます。
(表2)

